素粒子の一種であるニュートリノは、物質との相互作用が極めて弱く、検出が難しい。そのため、素粒子の中では最も性質のわかっていない粒子の一つである。ニュートリノの性質を詳細に調べることにより、宇宙の物質起源や標準模型を超えるより根源的な法則の解明につながる可能性が指摘されており、ニュートリノ研究は、素粒子物理学の最も重要な分野の一つとなっている。1987年のカミオカンデによる超新星ニュートリノの検出、1998年スーパーカミオカンデによる有限なニュートリノ質量の発見、T2K実験によるCP対称性の破れの兆候など、この30年のニュートリノ研究の進展は目覚ましい。本講義ではニュートリノの性質を理解し、最先端の研究状況に触れ、さらに将来の方向性について学ぶ。