ユーラシア東西に民族・国家を超えて拡大したチベット仏教圏(チベット,ヒマラヤ,モンゴル,中国西北・東北,ロシア)の盛衰は,アジア史の理解のため,そして特定の民族史・一国史に収斂することのない豊かな世界史像を考えるために,有効かつ重要な題材となります。本講義では,特に16世紀から現在に至るまでの,チベットおよびチベット仏教圏の歴史を解説し,これらの地域が近代以降に直面した課題を考察していきます。チベットの近現代史が中心になりますが、その内容を理解する上での前提として、前近代史、チベットの習慣・文化・社会についても適宜説明を加えます。